2009-12-30

よりよく死ぬための哲学

NHKの番組、爆笑問題のニッポンの教養を観た。
テーマは「よりよく死ぬための哲学」。

今回出演した清水哲郎東京大学教授は、25年前に始まった妻のガン闘病をきっかけに、医療現場に足場を置きながら思索を続けてきた。
医療告知や緩和医療など、ぎりぎりの状況で意志決定や選択を迫られる患者とその近親者に対して、医療の側はどう理解し、どう寄り添っていけばいいのか。

人の死=関係の死という話があった。
爆笑問題の田中さんは奥さんと離婚した。
田中さんにとっては「離婚しましょう」と言ってからの奥さんと、それまでずっと好きでいてくれた奥さんは全く別の人間になっている。
関係の切れてしまった奥さんは死んでしまったも同然であると言っていた。
別の人に変わっているから、いくら探しても昔の奥さんはもういない→死んだも同然であるということだ。

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ちょっと脱線すると、このことに関しては自分も付き合っていた彼女を失くして(亡くして)同じことを思ったので正しいと思う。好きでいてくれたあの人はもういない。
振られた瞬間の、何を言っても聞いてくれない、あの状況を思い出せば思い出すほどすでに彼女は死んでいたんだなと思える。何を言っても元に戻ろうとしてくれない、自分の知らない彼女。別人の彼女。幽霊。
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この人間の死=関係の死を踏まえて、人は死にどのように向き合えばいいのか。
医療の現場で、死に直面した患者や家族の思いに医療の側はどのように向き合えば良いのかというものを考えてみる。

結論は「一般的な死など無い。死は人それぞれにある。」という話で締めくくられた番組内容だった。

死ぬのは人の勝手かもしれない。
でもそれでは社会として成り立たなくなっている。
どういう「死に方=生き終わり方」も良いとは思うが、現代ではこのままでは社会が、地域医療が崩壊してしまう。

そこで考えたのは、その勝手を実現する社会システムが必要なのかもしれないということ。

「みんなに見守られて死にたい」
「人様に迷惑をかけて死にたくない」
この両方が実現できて、なおかつ社会として無理が生じないシステム。

現在の日本の地域医療は、世界最高峰の少子高齢化率によってすでに崩壊している。
患者の家族が地域医療に参加できず、家族である患者を「預ける」という状況になってしまう事で問題がさらに悪化している。

たとえば親が危篤で「これ以上このままにしておくと辛いだろうし、本人を楽にしてあげた方が…」のような話が病院側と家族の間で行われていたとする。

家族は死に慣れていない。対して病院側は死に慣れている。
親の死は仕方ない事であるし、親より先に死なない限りは、誰もが経験することだ。
しかし、家族の生死の責任を医療現場に「預ける」という行為のせいで、家族側は死を避けようとしているのではないだろうか。

人は必ず死ぬ。自分も受け入れたくなんて無い。しかし、それでは無責任なのではないだろうか。
医療現場と患者との関係は家族に比べればかなり薄いものだ。
そこに家族を預けてしまっていること自体に疑問を持つべきだ。

「預ける」のではなく「家族と一緒に参加する」べきなのではないだろうか?

番組の中ではもうひとつ面白い話があった。

「葬式行った時の幸福感」
死んでからの幸福感。遺族が思うのは、これから死ぬという不安がない安心。
生きていることは不安定で、死んでやっと安定する。
死に際をどのように過ごさせるか。恋愛で言えばどのように別れ際の話をするか。
死に際にやりたいことを全うさせてやった、達成させてあげた死んでしまった今の方が安心している。
別れ際でお互いに理解することができてから別れた、相手を納得させて別れられた方が悩みもなく安心できる。(まぁ自分はこれが出来なかったせいで腐ってしまったのですがw)

この死んでしまった後の考えに何かヒントがあると思う。
やはり、死ぬまで、別れるまでのやり取りや心の準備が必要なのだろうと思う。

死んでしまう家族の決定を、皆が安心してOK出来るシステム作りをするべき。
そのためには日ごろから家族との連携をとれるような、社会システムが重要である。
死に別れも恋人同士の別れも同様、急な話では周りに色々と負担がかかる。
その負担が地域医療崩壊という現象まで膨れ上がった今、「日ごろのやり取り」という小さなコミュニケーションの積み重ねの重要性を物語っている。

どういう「死に方=生き終わり方」も良いとは思うが、現代ではこのままでは社会が、地域医療が崩壊してしまう。
綺麗事だけでは済まさず、多様な生き終わり方を実現するために、理想と現実のバランスのとれた社会システムデザインが重要なのだ。

ここで書いたシステムをどのように具体化するかは、今後の修士論文で発表できればと思う。
頑張ります。(とりあえず第1版早く書きあげないと…orz)


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